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「益より害が上回る」…、女性FDA長官が体を張って?承認撤回したアバスチンの問題とは?(ミミポポさんも苦しむ)-7月15

 

 アバスチン(ベバシズマブ)は、がん組織へ栄養や酸素を補給する専用のパイプ(血管)が作られないようにして、がん組織の成長を妨げることを目的とした、血管新生阻害剤と呼ばれる薬です。2004年2月に米国で進行大腸がんの治療に初めて承認され、その後も進行した肺がん(2006年)、腎臓および脳(膠芽腫)がん(2009年)への承認がなされています。そして、2008年に米国FDAの加速承認プログラム(Accelerated Approval Program)により転移性乳がんの治療に承認されました。しかし、このアバスチン、「生存期間の延長に資さず、毒性が強く、高血圧、血栓塞栓症、左心室機能障害、心筋梗塞、消化管穿孔、タンパク質尿など、生命に関わる有害事象が懸念され、益より害が上回る」との声明が付され、2011年11月、FDAは承認取り消しを発表しました(現在に至る)。

 アバスチンの米国での承認と取消しの経緯については、NIH(米国立衛生研究所)のライブラリーに収納されている、サウジ製薬ジャーナルの記事が詳細に記載しています。ご関心のある方は翻訳機能を利用して閲覧してください。

 ポイントは、E2100という臨床試験と、AVADOおよびRIBBON 1という臨床試験が、「根拠となるデータ」として参照されたこと。E2100では、全生存期間中央値(ОS)が、パクリタキセル+アバスチンが26.5か月、パクリタキセル単剤が24.8か月と、わずか1.7か月の改善にとどまったこと。AVADOおよびRIBBON 1では、ドセタキセル+アバスチンが30.2か月(3.2は誤記載)、ドセタキセル+プラセボが同31.9か月と、逆に1.7か月命を縮める結果になったこと。

 そして当初の承認時のFDAの投票結果は5対4と僅差だったこと。このため、承認取消しは、マーガレット・ハンバーグという女性長官が主導しての結果がうかがえることです。

乳がんは女性特有のがん…。有害事象に重きを置いた女性長官ならではの結果と考えられます。サウジ製薬ジャーナル(翻訳機能をご利用ください)

 

日本では「弱い推奨(35人中34人)」が継続

 

 

 一方、日本では、アバスチンについて「害より益が上回る」として、「弱い推奨」、つまり標準治療の選択肢として残り続けています。

「乳癌診療ガイドライン2022年版」でも、「ベバシズマブ(アバスチン)の併用によってPFSは延長しORRは改善するが,OSに差はなく,毒性は上昇した。また,QOLに差は認められなかった。以上から,益と害のバランスは確実ではある(益が害を上回る)が大きくないと判断した。推奨決定会議での投票では,「行うこと強く推奨する」が3%(1/35),「行うことを弱く推奨する」が97%(34/35)で,推奨は「化学療法にベバシズマブを併用することを弱く推奨する」に決定した。」との説明が付されています。
 推奨決定会議での男女の構成は不明ですが、やはり決定権者の「性差」(男性にとってはほぼ他人事)によって、どちらにも転ぶ可能性のある「薄氷」の上に、アバスチンというクスリが、乳がん治療の現場に立っていることを強く留意する必要があると考えられます。

「乳癌診療ガイドライン2022年版」

 

 がん治療の有害事象は、「個人差」が強く出ます。「相性」もあります。アバスチンについては、きわめて丁寧な上記のような経緯が存在する薬であることを説明する必要があると思われます。

 

 

ОS、PFS、ОRR…、基本用語の意味と、重要度の常識をおさえましょう。新薬の実力と有害事象(副作用)の詳細を知りましょう。